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2022.08.19 Friday ジュエリーの知識

8月の誕生石 スピネル

こんにちは、
スタッフの小松です。
 
8月も終盤になりました。
学生の頃は8月丸ごとお休みだったなんて、
何年間もそう過ごしてきたはずなのに
当時何をしていたか全然思い出せません。
 
もしも今、1ヶ月間の夏休みがもらえるなら
何をしたいでしょうか?
 
私は家とは違う場所で暮らしてみたいです。
コロナが落ち着けば外国でも。
年を重ねたからか
言葉が通じない心配よりも
どうにかなるんじゃないか精神が勝っています。
想像だけでも楽しそうです。
 
 

 
 

1.スピネル


新しい誕生石 8月 スピネル
今回は2021年に
新しく追加された8月の誕生石
スピネルについて。
 
スピネルは透明石で
いわゆる宝石っぽい石です。
語源はラテン語で棘を意味するspina、
和名では先晶石(せんしょうせき)と言います。
 
またスピネルは原石が特徴的な形をしており
綺麗なものは八面体の結晶として産出します。
岩の中に鮮やかな色の八面体の石が出てくるのは
なかなか綺麗なのではないかなと思います。
先月紹介したアクアマリンの原石と比較すると
原石の形が全然違うのも面白いところです。
 
傷の付きにくさを表すモース硬度は7.5〜8。
劈開性という割れやすい方向もなく、
傷つきにくく丈夫な宝石です。
 
またこの石の1番の特徴に
色の種類の豊富さがあります。
トップの写真のようなレッドから始まり、
ピンク、バイオレット、イエロー、
オレンジ、ブルー、ダークグリーン、ブラックと、
ほとんどの色をもつ
バリエーション豊かな宝石です。
 
割れにくく、傷つきにくく、色も豊富な宝石、
なのにスピネルってあまり有名な石では
ないですよね。
 
実はスピネルが独立した鉱物種として
認識されるようになったのは
約百数十年ほど前からのこと。
 
ジュエリーの素材としては優秀なのに
あまり評価されてこなかった理由は
「ルビーと似ていて紛らわしかった」
という理由が大きく影響しているようです。
 
以前ペリドットがトパーズと間違えられていた、
ということを書いたことがあるのですが、
今回のスピネルもよくルビーと混同されてきました。
 
どこが似ているのかというと、まず見た目です。
トップの写真は
透明石で鮮やかな赤い色のスピネルなのですが
隣に似た色のルビーを置いて
ルビーかスピネルかを当てるには
宝石鑑別の専門家でなければ判断できません。
 
そしてスピネルが産出する場所が
ルビーやサファイアと同じ場所である
ということも挙げられます。
スピネルの主な産地はミャンマー、スリランカで
ルビーやサファイアの産地でもあります。
 
原石の形は異なるのですが
産出する際に常に原石が綺麗な形を
保っているわけではない為、
同じような見た目の石が
同じところから出て来れば
確かに混同してしまいそうですね。
 
こうして混同されていたルビーとスピネル、
世界的に有名なジュエリーにも
こうした混同が起きていました。
 
間違われていた中でも一番有名なのが
「黒太子のルビー」と呼ばれている
約140ctの大きなスピネルです。
 
「黒太子のルビー」は
イギリスの国王冠に留められています。
カットされていない大きな赤い石を磨いたもので、
ちょうど王冠の中央に位置する
クロスパティーにセッティングされています。
写真を調べてもらうと
なんかみたことある!と思う方も多いのではないでしょうか。
 
この国王冠は戴冠式の時につける冠で、
戴冠式とは新国王や女王に即位した後に行う
戴冠の儀式のことです。
国王冠にはこの黒太子のルビー以外にも有名な石が使用されており
大きなダイヤモンドの原石から分けられた
「カリナンⅡ」という名前のクッションカットのダイヤモンド、
また104ctの「聖スチュワート・サファイア」、
その他たくさんの宝石が散りばめられた豪華絢爛な王冠です。
普段はロンドン塔の宝物館に展示されているそうですよ。
 
そんな重要な王冠に留められて
ずっとルビーだと思われていたこの石は
近代の宝石科学の発展によって
スピネルだと判明しましたが、
今でも敬意を表して
「黒太子のルビー」と呼ばれています。
 
そんな大きな誤解の歴史もあり、
「スピネルはルビーの偽物」という
印象がついてしまったためか人気が上がらず
今でもスタンダードな宝石ではありませんが、
実は産出量はルビーよりも低いので
希少性はルビーよりも高いと言えます。
 
また赤い石には他にガーネットなどがありますが
スピネルほど鮮やかな赤い石は珍しく
発色の良さでルビーにも代わる石として
近年では注目を集めているため
今後その存在価値は徐々に
大きくなっていくのではないかなとも思います。
 
誤解されてきた美しい石
スピネルのお話でした。

 
 

2.まとめ


今回は新しい8月の誕生石である
スピネルについて書いていきました。
 
紛らわしいという理由で
あまり人気が出なかったスピネルですが、
ルビーとスピネルを混同してしまう問題は
現在の宝石科学では問題なく解決できます。
 
この2つの宝石の大きな違いは
鉱物には屈折という性質があり
ルビーは複屈折、スピネルは単屈折だというところです。
鑑別機関に出せば判別できますので
ルビーだと思っていたものがスピネルだった
という間違いは今は基本的には無いと思います。
 
そしてスピネルは丈夫な石なので
マリッジリングやエンゲージリングにも
使いやすい宝石だと思いますよ。
 
新しい8月の誕生石として
さらに認知が広まってくれれば
嬉しいなと思います。
 
次回は9月の新しい誕生石
クンツァイトについてです。
 
薄ピンク色の透明石、
でもモルガナイトとは少し違います。
 
次回もお楽しみに。

 
 
GIA スピネル
wikipedia スピネル
ジュエリーコーティネーター3級テキスト
世界のジェムストーン図鑑

書いた人

スタッフ 小松
ジュエリーの専門学校と御徒町のジュエリー工房で制作経験を積む。ジュエリーの商社でMDとして3年務めたのち、2019年からhitotsuchiに仲間入り。WEBサイトやSNS更新など中の人を担当。ジュエリーコーディネーター3級。
好きなこと:カフェ・お菓子屋さん巡り、刺繍、カメラ、映画、読書、居合道

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