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2022.12.23 Friday ジュエリーの知識

12月の誕生石 ジルコン

こんにちは、
スタッフの小松です。
 
先日東京博物館で開催されていた
「国宝展」に行ってまいりました。
 
巻物や書、刀、螺鈿の箱など
所狭しと並ぶ国宝は圧巻で
歴史や美術の教科書で
見たことがあるものばかり。
直接見た中で一番かわいいなと思ったのは
武装した埴輪です。
 
後半には
東京博物館の歴史にまつわる
展示がありました。
 
当時の博覧会の様子を描いた絵の中に
天井近くに絵画を飾っているものがあって
確かに少し高めに展示すれば
後ろの人も見やすいじゃないと感心したり
(近くでじっくりは見れませんが)、
お土産で渡されていたという
展示物一覧が描かれた浮世絵を見て
今も昔もなんとなく
展示一覧は見たいものなんだなと面白く思ったり。
久しぶりに美術展を見に行って
色々なものを見聞きするのは
とても楽しかったです。
 
歩き疲れた帰り道、
門を出て見える左右のカフェは
大体大混雑しています。
 
駅とは反対ですが、少し右に歩いていくと
黒田記念館の横に上島珈琲店があります。
レトロモダンのかわいい店舗でおすすめですよ。
 
 

 
 

1.ジルコン


12月 誕生石 ジルコン
今回は2021年に
新しく追加された12月の誕生石
ジルコンについて。
 
ジルコンというと
キュービックジルコニアのこと?とか
ダイヤモンドの偽物?
と言われることもありますが
ジルコン自体はれっきとした天然石です。
 
名前や石の特徴により
誤解されやすい宝石の一つですが
実はすごく古くからある宝石なんですよ。
 
今回はそんなジルコンについて
ご紹介していこうと思います。
 
 
ジルコン、英語ではzirconと書きます。
ジルコンの名前の由来は
Cinnabar(日本語で辰砂)や
Vermilion(日本語で朱色、真紅)を意味する
アラビア語の「zarkun」か、
もしくは
金色のという意味の
ペルシャ語「zargun」であると言われています。
 
和名では風信子石、またヒヤシンス石と言います。
風信子はふうしんしと読むのですが、
これはヒヤシンスの宛字だそうです。
なんだか可愛らしい名前ですよね。
 
なぜヒヤシンス石という名前なのかというと
黄色のジルコンがヒヤシンスの学名である
Hyacinth(ハイアシンス)と呼ばれていたことから、
和名ではヒヤシンス石と呼ばれるようになったそうです。
 
石の色は
名前の由来にもなっている赤と黄色の他にも
青、オレンジ、ブラウン、緑、無色とあり
色の種類が豊富な宝石です。
 
また、ジルコンの石の特徴として
屈折率が高くファイアも強く出る
というのが挙げられます。
 
屈折率が高いということは
宝石に入ってきた光を反射しやすく
輝きが強いということを表し、
またファイアというのは
新しい7月の誕生石のスフェーンでも書きましたが
石の中に現れる虹色の光のことで、
 
屈折率が高くファイアが強いことから
ジルコンはとても美しく輝く宝石であることがわかります。

 
 

2.ジルコンはダイヤモンドの模倣品?


屈折率が高くて輝きが強く
ファイアも強く出るジルコンと似ている石があります。
それが冒頭でも書いたダイヤモンドです。
 
ダイヤモンドも同じく屈折率が高く
ファイヤが強いという特徴を持っています。
透明なジルコンとダイヤモンドでは
普通に見ただけではほとんど区別がつきません。
 
そうしますと有名で高価な宝石には時折ある
「似たような名前をつけた似たような石」
を使ったジュエリーが出てきます。
特に鑑別がまだ発達していなかった時代には
このようなことがあったようです。
 
調べてみたところジルコンの場合は
 
・1900年代初頭に無色〜薄黄色のジルコンが発掘され
見た目がダイヤに似ていたことから
品質の低いダイヤモンドとして扱われ
「マタラダイヤモンド」と呼ばれていた説
(おそらくダイヤモンドとジルコンの区別がつかず
混同していたということだと思います)
 
・1900年代初頭に熱処理され無色にしたジルコンを
「マタラダイヤモンド」と呼びダイヤモンドと偽って売っていた説
 
という2つの説がありました。
 
自然界で無色のジルコンが出ることは稀なのと
後者の説を書いているところの方が多かったので、
ジルコンはダイヤモンドの模倣品として
売られていた過去があり
「偽物」という印象がついてしまったようです。
 
「マタラダイヤモンド」という名前のジルコン、
非常に紛らわしくわかりずらいですね。
ちなみに今透明なジルコンは
マタラジルコンと言われているそうです。
 
ジルコンとダイヤモンドは
ひと目見ただけでは区別がつきませんが、
比重の違い、屈折率の違い、含有物の違いがあるので
専門機関の鑑別に出すことで
ダイヤモンドとの区別ははっきりとつきます。
 
またダイヤモンドとの違いは硬度にもあります。
ジルコンのモース硬度は6〜7.5とあります。
宝石として扱われるジルコンは7.5のものが多く
石の硬度としては高い方なのですが、
一方でダイヤモンドの高度は10で
石の中で最高の硬さを持っています。
 
そして最高の硬さをもつダイヤモンドは
カットされたの際のエッジ(角の鋭さのようなもの)が強く出る宝石です。
ジルコンはダイヤモンドに比べると柔らかく
打撃や圧迫に弱く欠けやすいこともあり
ダイヤほどのエッジが出ないという違いがあります。
 
宝石店で使うような10倍ルーペで見比べると
なんとなーくそのエッジの違いがわかるのですが
それだけで種類を確定するには不十分ですので
そんな違いがあるんだなと
思っていただければ嬉しいです。

 
 

3.地球最古の宝石


12月 誕生石 ジルコン
ここまで宝石としてのジルコンについて
書いてきましたが、ジルコンは
ものすごく珍しい石というわけではありません。
 
もちろん、
ジュエリーになるまで美しく成長した宝石は
珍しく価値の高いものになりますが、
小さな粒子のジルコンは砂岩などの堆積岩として
地球上に広く産しています。
 
そんな小さなジルコンが2014年
地球最古の地殻で見つかりました。
というより、
その地殻にあったジルコンを調べたことで
その場所が地球最古の地殻であると確認されたそうです。
 
地球最古の地殻は
オーストラリアのジャックヒルズというところにあります。
どのくらい古いのかというと
43億7400万年前(誤差はプラスマイナス600万年)ということです。
誤差のレベルが桁違いですね。
 
私を含め古さにピンとこない方に、
・人間の祖先のアウストラロピテクスが
アフリカの大地を歩いていたのが約350万年前
・恐竜がいたのが約2億3000万年前~6600万年前
・地球が生まれたのが約45億年前
 
といえばどれだけ前のことか
お分かりいただけると思います。
 
地殻専門家ではないのでよくわからないまま書きますが
どうやらその地殻にあったジルコンの原子が
ジャックヒルズの地殻が最古かどうかの裏付けを手伝ったようです。
なんだか分かりませんがすごいぞジルコン!となりますね。
 
まだ(おそらく)生命活動もなかった頃の地球の一部。
この発見が地球誕生や地球外生命の
ヒントになるのかもしれないと思うと
なんだかワクワクしますね。

 
 

4.まとめ


今回は12月の新しい誕生石
ジルコンについて書いていきました。
 
文章中にも書いた通り
「マタラダイヤモンド」として売られていたことから
誤解されてきた宝石。
本来はとても綺麗な石なので
12月の誕生石になったことで
存在が広まればいいなと思います。
 
ちなみにジルコン以外に
ダイヤモンドに似ている見た目の石や
ダイヤモンドと名前についている石って
どんなものがあるのかな?と思い調べてみました。
 
 
見た目が似ている石
 
・キュービックジルコニア
人が作り出している人造石です。
輝きはダイヤモンドに非常に近く安価な為、
よくアクセサリーなどに使用されています。
CZと略されていて、色の種類も豊富にあります。
石の成分や構造はダイヤモンドとは違います。
 
・モアサナイト(モアッサナイト)
見た目もダイヤモンドに似ていて、
モース硬度もダイヤモンドに次ぐ9.5という石です。
モアサナイトには天然石も合成石もあります。
天然石は地球上で産出することは稀で
ほとんどは隕石から採れます。
隕石から採れる石はものすごい貴重なので
市場に出ているモアサナイトは人が作っている合成石です。
輝きも硬度もダイヤモンドに匹敵することから
ダイヤモンドの代わりに
モアサナイトだけでジュエリーを作っている
ブランドもあります。
 
※合成石とは、人が作り出した
天然石と同じ成分・同じ構造の石のことです。
人造石は天然石とは違う成分や構造のため
言葉の使い分けをしています。
 
 
名前にダイヤモンドがつく石
 
・ハーキマーダイヤモンド
名前にダイヤモンドとついていますが水晶です。
ニューヨーク州ハーキマーで採れる石で
透明度が高く、産出した形そのままで
ジュエリーにできることから
少し前から市場に浸透し始めました。
アクセサリーなどに使われることの多い
可愛らしい石です。
 
・ラボグロウンダイヤモンド
人の手で作った合成石のダイヤモンドを
ラボグロウンダイヤモンドと呼びます。
lab grown でラボで育ったという意味で
合成ダイヤモンドと同じです。
見た目も成分も構造も天然石と同じ
人が作った合成石です。
 
このラボグロウンダイヤモンドの難しいところは
・天然石との棲み分け
(価格や天然石とどう区別を付けるかがはっきり決まっていない)
・まだ開発途中で天然石よりもコストがかかる
(コストの面はちょっと前の情報なので
変わっているかもしれません)
というところがあり、日本ではあまり浸透していませんが
アメリカではエシカルなジュエリーという視点で
ラボグロウンダイヤモンド専門の
ジュエリーブランドなどもあるそうです。
 
 
最後にダイヤモンドに似ている
人造石・合成石・天然石をご紹介しました。
 
天然石以外の石や
似ている石が存在することを
知っていただけるきっかけになれば嬉しいです。
 
 
去年発表された新しい誕生石は
以上になります。
今後は気になる宝石があれば調べて
ご紹介しようかなと思っています。
 
今回はここまで。
次回もお楽しみに。
良いお年をお迎えください。
 
 
参照
GIA ジルコン
Wikipedia ジルコン/モアサナイト/合成ダイヤモンド
地球最古の地殻、44億年前と年代特定

書いた人

スタッフ 小松
ジュエリーの専門学校と御徒町のジュエリー工房で制作経験を積む。ジュエリーの商社でMDとして3年務めたのち、2019年からhitotsuchiに仲間入り。WEBサイトやSNS更新など中の人を担当。ジュエリーコーディネーター3級。
好きなこと:カフェ・お菓子屋さん巡り、刺繍、カメラ、映画、読書、居合道

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